認知症の方の損害賠償事故、愛知県大府市が保険料負担へ。
愛知県大府市は認知症の市民が事故等を起こし損害賠償を求められることに備え、2018年度より損害賠償責任保険の保険料を市が負担することを決定しました。
認知症患者の公費救済制度は、神奈川県大和市に続いて全国で2例目です。
進む高齢化。増える認知症患者
高齢化が進む日本では、認知症患者の増加も社会問題となっています。
認知機能の低下により正常な判断ができなくなり、思わぬ事故(損害賠償事故)を起こしてしまうこともあります。
認知症の方が事故を起こしてしまっても責任能力のない「責任無能力者」とみなされ、損害賠償責任を負わないことが一般的ですが、家族が「監督義務者」として損害賠償責任を負うこともあります。
実際に、認知症の方が起こした事故に関して家族が訴訟を起こされた事例もあり、世間より注目されました。
認知症患者の損害賠償訴訟例
2007年12月に、認知症の男性が線路に立ち入り列車にはねられる鉄道事故がありました。この事故により、鉄道会社は遺族に対して振替輸送費等の損害賠償訴訟を起こしました。
第一審の地裁は男性の妻と長男に対して鉄道会社の請求額の支払いを命じましたが、第二審の高裁では男性の妻にのみ請求額の半額の支払いを命じました。
しかし、最高裁では男性の妻は監督義務者とはみなさず、損害賠償義務は無いとして鉄道会社の請求を棄却しました。
このケースでは長男を含む家族が監督義務者とみなされませんでしたが、介護の状況等の場合によっては家族が監督義務者とみなされることもあります。
家族がずっと見続けることは難しい
認知症の方が事故を起こさないように、介護をする家族の方はしっかり見ている必要があるかと思いますが、1分1秒も目を離さずに介護をすることは無理です。
もう何年も前の話ですが、認知症の祖母を自宅介護していたことがあります。母親と叔母の二人で介護をしていたのですが、二人で見ていてもどうしても目を離してしまう瞬間はありました。
目を話した隙に事故を起こしてしまうことを考えると、個人賠償責任の存在は非常に大切だと思います。
介護の負担は変わらないけれど、心の負担が少し減る
大府市は、認知症の方の損害賠償責任保険の保険料を市で負担するとのことです。
このことによって、介護そのものの負担が減るわけではありませんが、万が一への備えがあることで心の負担は減らせるでしょう。
他の自治体でも同様な動きがあるといいですね。
(以下はニュース記事からの抜粋です)
認知症徘徊事故、大府市が保険料肩代わり 全国2例目
愛知県大府市は二〇一八年度から、認知症の市民が徘徊(はいかい)中に事故などを起こして損害賠償を求められる事態に備え、市が保険料を肩代わりする制度を新設する。市によると、自治体によるこうした取り組みは全国で二例目。関連費用として数十万円を一八年度当初予算案に盛り込む。
対象となるのは、認知症の市民が交通事故や暴力行為で第三者にけがをさせたり、物を壊したりしたケースなど。徘徊の恐れのある人を発見・保護しやすいように、家族の申請などで事前に登録する制度をつくる。