ハッキングされた自動運転車の事故は「政府保障事業」で保障
完全自動運転車がハッキングされたことにより起きた事故について、政府は「盗難車による事故」と同一にみなし、政府保障事業として被害者の損害を補填する方向で最終調整に入っていることが明らかになりました。
完全自動運転車のリスク
ドライバーの運転操作が不要な「完全自動運転車」についてはまだ実用化されていませんが公道での走行試験も行われていますから、近い将来に実用化されることは間違いないですね。「官民ITS構想・ロードマップ2017」では、2025年の実用化を目指しているようです。
さて、完全自動運転車が普及するためには法整備等の課題があります。
現在の日本では、「ドライバーが運転を操作している」ことを前提として法整備がされているため、完全自動運転車で想定される「ハッキングや誤作動によるリスク」については対応していません。
完全自動運転車の実用化にあたってこのリスクにどう対応するかが課題だったのですが、この度「ハッキングによる事故」の場合は政府保障事業により被害者の損害を補償する方向であることが明らかになりました。
政府保障事業とは、自賠責保険の補償対象とならない盗難車や無保険者、ひき逃げの被害者を補償するものです(加害者が判明したら、政府が被害者に代わりに加害者に賠償請求をします)。
補償額は自賠責保険と同額ですが、「加害者請求ができない」ことや「社会保険からの給付された金額は差し引かれる」といった点が自賠責保険と異なります。また、支払われるまでに時間を要することも多いようです。
ハッキングによる事故は自動車の所有者の責任ではないのだから、自賠責で補償されないのは当然といえば当然ですね。
完全自動運転車に自賠責保険は不要?!
そもそも完全自動運転車は運転操作が必要ないので、自賠責保険の対象となるドライバーや所有者が責任を負う事故はほぼなくなると考えていいのではないでしょうか。
もし完全運転車が事故を起こすのであれば、先に述べた「ハッキング」や「誤作動」が大半を占めるでしょう。あとは、相手がぶつかってくる等の被害者となる事故ですかね。
そうなると、完全自動運転は自賠責保険に加入しなくても問題ないように思えますが、「メンテナンスの不備による事故」等の少ないかもしれませんが所有者が責任を負う事故も想定されるので、自賠責保険を無くすことは難しいですね。
ただ、自賠責保険の対象となる事故は確実に減るのは確実ですね。
任意自動車保険では新たな特約で対応
さて、任意自動車保険でも完全自動運転車の普及に向けて、新たな特約「被害者救済費用等補償特約」を開発しました。
従来の対人・対物賠償保険では、被保険者が「法律上の賠償責任を負った場合」に保険金が支払われます。
完全自動運転車では損害賠償責任の所在が判明するまでに時間がかかると想定されるため、被害者への補償に時間を要することが危惧されていましたが、この特約により責任の所在が明らかになる前でも被害者への補償が可能となります。
東京海上日動を始め一部の保険会社では既にこの特約が付帯された自動車保険は販売されています。
この特約は、完全自動運転車だけではなく現在普及している一部の運転操作が自動化されている自動車でも問題ないですね。
完全自動運転車が普及はもう目の前です。技術だけではなく法整備や想定されるリスクにもしっかりと対応がされ、交通事故のない世の中になって欲しいですね。
(以下はニュース記事からの抜粋です)>
ハッキングによる事故、政府が保障 自動運転車、官民タッグで開発競争に先手
政府が、ドライバーが運転に関与しない完全自動運転車による交通事故の賠償責任について、外部からのコンピューターシステムへの悪質なハッキングが事故原因の場合、「政府保障事業」として国の特別会計から被害者の損害を補填(ほてん)する方向で最終調整に入ったことが29日、分かった。自動運転システムが乗っ取られた状態での事故を「盗難車による事故」と同一にみなす。
現行の自動車損害賠償保障法(自賠法)では原則、車の所有者やドライバーらが責任主体となる。ただ、盗難車や無保険車による事故などでは、所有者らが加入する自動車損害賠償責任(自賠責)保険からの保険金は支払われない。
完全自動運転車ではハッキングのほか、システムの誤動作も事故原因になり得るため、政府が検討を進めてきた。自動運転車の責任範囲については、年度内にも政府が取りまとめる自動運転の「制度整備大綱」に方向性を盛り込む。