医療費の未収金対策に「取引信用保険」が誕生!
あいおいニッセイ同和損保は、医療機関向け取引信用保険の販売を開始しました。
この保険は昨今問題となっている医療費の未収問題を受け、未収金の一部を保険金として支払うことで医療機関の収益安定を図ることを目的としています。
増える外国人観光客の医療費未払い
来日する外国人観光客は年々増加しています。東京オリンピックも控えており、今後の増加が見込まれますね。
観光客の増加はうれしい反面、マナーの問題等の色々な問題を引き起こします。色々な問題の中の1つに外国人観光客の医療費未払い問題があります。
来日する観光客の多くが旅行保険に加入していません。旅行保険に加入せずに日本で医療機関にかかると、医療費は全額自己負担しなければなりません。私たちは健康保険に加入しているから医療費が3割で済むのでそれほど高額になりません。
また高額療養費制度によって、一ヶ月に負担する医療費の上限があります。しかし日本の健康保険に加入していない外国人は、高額な医療費を負担する必要があります。
そのような高額な医療費に備えて旅行保険があるのですが、多くの来日観光客は加入して来ないのです。そして日本で医療機関にかかっても高額な医療費を払えず、帰国してしまいます。帰国してしまったら医療費の回収は難しくなるので、医療機関に未収金が重くのしかかるのです。
お金がなくても治療を断れない
医療費を支払えないのであれば治療を拒否すればいいのではないか。そう思う人もいますよね。
実際に海外では医療費を支払える見込みがない人に対しては、治療を拒否する医療機関もあります。医療といえどもビジネスという考え方ですね。
しかし日本では、医師法第19条で「正当な事由がなければ、診察や治療を拒んではならない」旨(応召義務)を定めています。正当な事由は明確に定義されていませんが、経済的な理由で診察や治療を拒むことができないようです。
応召義務違反をしたからといって罰則はありませんが、医師として目の前の患者を放っておくことができないのでしょう。
取引信用保険は医療費未収問題の救世主?
今回あいおいニッセイ同和損保が販売開始した医療機関向け取引信用保険は、回収不能となった未収金の一部を保険金として支払ってくれます。未収金の全額が補償されるわけではありませんが、未収金を全く回収できないよりはマシですね。未収金の発生による医療機関の経営への悪影響も少なくすみます。
この保険は病床200以上の医療機関が対象となっています。平成27年度の「厚生労働省医療機関調査」によると、病床数20床以上の医療機関8480ヶ所のうち病床200以上の医療機関は約3割です。
半数以上の医療機関は、この保険の対象とならないのですね。大きな医療機関ほど未収金の発生率は高いかもしれませんが、規模が小さい医療機関は未収金が経営に与える影響は大きいのではないかと思います。今後は対象となる医療機関を拡大していって欲しいですね。
医療費未収問題の根本的な解決も大切
医療機関向け取引信用保険は医療費未収問題が発生したとき役に立ちますが、この保険で未収問題が解決するわけではありません。
医療費未収問題を解決するためには、来日外国人に保険の加入を義務付けるなどして未収問題が発生しないようにする必要があります。しかし、あまり厳しい条件を設けてしまうと来日観光客の減少も考えられるので、なかなか難しいですね。
(以下はニュース情報より一部抜粋)
あいおいニッセイ同和損保、医療機関向け取引信用保険の販売開始
あいおいニッセイ同和損保は、医療機関において課題となっている未収金問題の解決策の一つとして、「医療機関向け取引信用保険」の販売を開始した。
医療機関は医師法第19条で応召義務が課せられており、他の業界に比較して未収金が発生しやすい構造となっている。従来より未収金の問題は医療機関にとって課題となっている。同社ではこのニーズに対応し医療機関の収益安定の一助となるべく保険商品を開発した。