死亡交通事故の原因は自動運転機能?
2016年、アメリカのテスラ社の自動車がトラックの側面に衝突する事故があり、運転していた男性が亡くなりました。
テスラ社の自動車「モデルS」には自動運転機能が搭載されており、事故後に回収されたデータによると死亡した男性は事故当時ハンドルには手をかけておらず、ブレーキをかけた痕跡もありませんでした。
米運輸安全委員会は、この事故に関して自動運転機能も事故の一因としています。
事故に遭った自動車は、完全な自動運転車ではなかった
事故にあった男性が乗車していた「モデルS」は、自動運転レベル2の機能を搭載していました。
米国に拠点を置く自動車技術者協議会(SAE)のレベル分けによると、レベル2は「システムが、前後・左右両方の車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施」としています。
具体的に「モデルS」は、前方の自動車への衝突を回避する「クルーズ・コントロール」と車線の外に出ていかないようにする「レーン・センタリング」機能が備えられていました。
【参考】SAEによる自動運転機能のレベル分け
レベル | 内容 |
---|---|
1 | システムが前後・左右いずれかの車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施 |
2 | システムが前後・左右両方の車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施 |
3 | システムが全ての運転タスクを実施(限定条件下) ※システムの要求に応じ、対応する必要あり |
4 | システムが全ての運転タスクを実施(限定条件下) ※システムの要求に対応する必要なし |
5 | システムが全ての運転タスクを実施(全ての条件下) ※システムの要求に対応する必要なし |
自動車の機能が事故の一因だとしても…
この死亡事故では、車載カメラがトラックを認識できなかったことが事故の一因だとしています。横から出てくる自動車を認識できなかったことに関しては、機能の欠陥と言わざるを得ないと思います。
しかし事故の大きな原因は、完全な自動運転機能がないレベル2の自動車でハンドルをほとんど握っていなかったことです。運転者が自動車の機能を過信していたのは明白ですし(もしかしたら、完全自動運転と思っていたのかもしれません)。
テスラ社側が「人間が運転するより2倍安全」と謳っていたのですから、自動車の機能を過信するのは無理もないと思います。技術の問題も大切ですが、どのような機能が備えられているかをしっかり伝え、運転者に理解してもらうことが重要でしょう。
今後も、自動運転技術は進歩していきます。テスラ社は、レベル5の完全自動運転車登場についても示唆しています。しかし、完全自動運転車が登場しても交通事故は無くならないと思います。
開発する側も運転する側もシステムを過信せずに、交通事故を少しでも減らして欲しいですね。
(以下はニュース記事からの抜粋です)
テスラ車死亡事故、自動運転機能が一因と米当局
自動運転モードで走行する車が起こした初の衝突死亡事故に関して、米国の規制当局は、米テスラ社の自動運転技術の装備上の欠陥を原因の一つとして指摘した。
テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、同社の「オートパイロット(自動運転)」システムを使えば運転者が関わらずに長距離走行ができると誇っている。テスラの最先端技術は人間が運転するより2倍安全だという。
しかし、問題の事故に関する米運輸安全委員会(NTSB)の12日の公聴会では、この技術に関して、運転者を衝突回避に間に合わない状態にしてしまう「作動上の限界」が強調された。